※ネタバレ警報:作品の基本設定から結末まで、主な出来事が含まれているよ。アニメを先に見てくることをすすめるね!
✦ 三人の性格タイプ
タイプの分類は、場面に基づく解釈
『20世紀電氣目録』のキハチは、兄を失ったあと、夢と人を疑うようになり、イナコは、自信が足りないのに、他人を信じる気持ちを手放さない。
二人は、お互いのやり方を無条件にまねるより、疑いと信頼がそれぞれいつ必要なのかを、一緒に学んでいくことになる。
「電気」がまだ夢だった時代
舞台は、蒸気機関が発達した20世紀初めの京都だ。蒸気機関から噴き出す煙が街を覆い、電気は、まだ世の中を変える未来の技術にとどまっている。
少年キハチは、兄のセイロクと、電気で動く発明品を想像しながら、つくりたいものを「20世紀電氣目録」に書きとめている。二人は電気の時代を開こうと約束するけれど、セイロクは、目録を持って戦場へ旅立ったあと、帰ってこない。
兄と夢の証拠を一度に失ったキハチは、発明を続ける勇気を失い、何でも簡単には信じない人になる。
そんなキハチの前に、「酒蔵の家の娘」のイナコが現れる。イナコは、亡くなった母のようにいい酒を醸す人になりたいけれど、家では、ミスだらけで自信もない娘と思われている。
家の事情で、蒸気産業の財閥の後継者ヨウスケと、政略結婚までしなければならない立場だ。イナコが電気目録を持って現れたことで、キハチは、忘れようとしていた夢に、もう一度向き合うことになる。
二人は、目録に書かれた発明を再現して、婚約から逃れるために、一緒に旅に出る。ところが、物語が進むほど、ヨウスケもセイロクと電気の未来を夢見ていた人で、彼を失ったあと、電気技術で過去を取り戻そうとしているという真実が明らかになる。
キハチ — ENTP 6w7
✦ 電気でつくったもの
キハチとヨウスケの手で現実になった電気技術
キハチは、ENTP 6w7と読める。彼は、アイデアを思いつくことに満足せず、手に取れる発明品にして、結果を確かめようとする。
ヨウスケの蒸気技術に押される状況でも、自分の発明で立ち向かい、電気満月を実現したあとは、電気を使った演奏で、蒸気パイプオルガンと競ったりもする。
既存の方式が行き詰まったら、別の材料と原理を組み合わせて解決策を探す点に、キハチの発想の転換と実験精神が表れる。
だからといって、キハチが危険を楽しむ楽天家なのではない。兄と電気目録が消えたあとは、また夢を失うのではないかと怖くなった。目録が戻ってきたときも、彼がすぐに信頼を見せたわけではない。
ヨウスケが、自分が探している秘密はないと、目録を偽物と断定すると、キハチは挫折して、まず真偽を確かめようとする。彼は、失敗したときに引き受けなければならないリスクを、よく考える。
こうした警戒心は、人を無条件に押しのける冷笑というより、大切なものを失ったあとに生じた自己防衛に近い。
✦ キハチの変化
盾だった疑いを下ろして、信頼を選ぶまで
変化は、イナコがキハチの才能を信じてくれることから始まる。ヨウスケは目録が偽物だと断定するけれど、イナコは、目録の真偽とは別に、キハチの夢と才能は本物だと考える。
その言葉は、発明が失敗したからといって、キハチが抱いていた可能性まで消えるわけではないという意味だ。その後、亡くなった夫を恋しがる織物屋の主人の話を聞いたイナコが助けを求めると、キハチは、電気でその悲しみを和らげる方法をつくってみようとする。
技術は、未来を変えるためだけに使われるのではなく、いま目の前の人を助けるためにも使えるということを、知ったのだ。
最後にキハチは、イナコに、彼女を信じていると直接言ったあと、一緒に崩れていく地下施設へ戻って、ヨウスケを救おうとする。過去のキハチなら、危険を確認できないという理由で止まったかもしれない瞬間だ。
彼は、何の根拠もなく信じる人になったのではなく、一緒に失敗して、また試みてきたイナコの行動を見て、信頼を選ぶことになったのだ。疑いが彼を守っていた盾なら、いまはその盾を下ろして、前に進めるようになったのだ。
イナコ — ENFP 2w1
イナコは、ENFP 2w1と見られる。自信が足りなくてミスも多いけれど、他の人の可能性を信じることにはためらわない。
ヨウスケが、目録は偽物だとキハチの夢を壊そうとするとき、イナコは、目録が完璧かどうかより、キハチが何をつくりたがっているかを見る。彼女の信頼は、根拠なく信じる態度というより、目の前の人が抱いた可能性を、先に見抜く方式に近い。
イナコの共感は、言葉だけで終わらない。母を失ったあと後悔を抱いていたイナコは、亡くなった夫を恋しがって心を閉ざした織物屋の主人の事情を聞いて、キハチに助けを求める。
自分が経験する悲しみを他の人の悲しみとつなげて、その人に必要なことを一緒に探そうとするのだ。人を助けたい気持ちと、正しいと思うことを実践しようとする態度に、2w1の面が見える。
✦ イナコの信頼と、その影
気づかいが自己犠牲に傾きうる
でも、イナコの信頼がいつも健全な選択につながるわけではない。彼女は、電気目録とキハチの夢を守ろうという思いで、キハチに知らせないまま、ヨウスケとの婚約を受け入れようとする。
他の人のための選択だけれど、肝心の自分の夢と気持ちは後回しにしたのだ。この場面は、イナコの気づかいが自己犠牲に傾きうるという弱点も見せてくれる。
もちろん、彼女も自己犠牲にとどまっているわけではない。しだいに成長した彼女は、母のように酒を醸す夢を実行する機会を得て、自分が望む未来を、自分で選び始める。イナコのENFPらしい面も、ここでよりはっきりする。
政略結婚という決まった道をたどる代わりに、まだ実現していない可能性を信じて、新しい道に飛び込む。最初はキハチの夢を信じて彼をまた動かし、最後には自分も、他人が決めた人生ではなく、自分の夢を生きられると信じるようになる。
イナコに必要な変化は、自分が守って保護する対象の中に「自分自身」を含めることだったのだ。
ヨウスケが見せるもうひとつの選択
✦ 同じ喪失、違う選択
セイロクを失った二人の分かれ道
ヨウスケも、単に権力をむさぼる悪役ではない。彼は技術に優れた人物で、セイロクと一緒に電気の時代を夢見たこともあった。けれど、セイロクを失ったあとは、彼を見送れず、電気の頭脳を通じて、セイロクを取り戻そうとする。
キハチは、同じ喪失を経験しても、イナコと仲間たちを通じて未来をまた見つめるけれど、ヨウスケは、過去を生き返らせることにすべてを賭ける。
だから、キハチとイナコがヨウスケを救いに戻る選択が重要だ。彼を許して、すべての過ちをなかったことにするのではない。彼が喪失のせいで間違った道に入ったとしても、そのまま死なせはしないという選択だ。
二人はヨウスケを救いながら、彼の行動を正当化する代わりに、過去に閉じ込められた人にも、別の未来が残っていることを見せる。
疑いと信頼は、互いに反対のように見えるけれど、どちらか一つだけでは前に進みにくい。
キハチは、人を疑う習慣を捨てないまま、誰かを信頼できるようになり、イナコは、他の人を信じる気持ちを守りながら、自分の夢を犠牲にしない方法を学んだ。
二人は、それぞれの弱点が、その人の世界のすべてを侵食しないように、お互いを助けたのだ。
今回はここまでにするよ。また会おう。
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