スポイラー:シーズン1の1〜10話(始まりからネタバレがあるから注意!まだ『プリズム輪舞曲』のシーズン1を見ていないなら、早く戻って!シッシッ)
リリにとってロンドン留学は、ロマンチックな冒険だけではない。6か月以内に美術学校で1位を取れなければ、日本に戻って、実家の着物店を継いで結婚しなければならない立場だからだ。
そんなリリが、ロンドンに着いた初日、道を教えてくれた見知らぬ青年のスケッチに心を奪われる。青年は、学校で天才画家として名高いキットだった。感嘆はやがて競争心に変わるけれど、同じ絵を見つめる二人の基準は、最初から違う。
『プリズム輪舞曲』の9話「才能と努力のグラデーション」は、その違いを痛く、そして鮮明に見せるエピソードだ。
✦ リリとキットをひと目で
ファンコミュニティの分類と、この記事の解釈
ファンの性格タイプのコミュニティでは、リリをENFP 4w3、キットをISFP 4w5に分類している。MBTIは作品の公式設定ではなく、ファンコミュニティのキャラクター分類だ。
この組み合わせを基準に見ると、リリは新しい可能性を見つけたら直接飛び込み、キットは自分だけの感覚と基準で絵を掘り下げるほうだ。しかも、二人はエニアグラムの核心タイプがどちらも4番だ。
自分だけのアイデンティティと表現を大事にするという共通点があるけれど、ウイングが違うから、その気持ちの表し方も違ってくる。
リリ ENFP 4w3、絵で自分の可能性を証明しようとする人
✦ リリの場面の流れ
1話から7話まで
1話でリリの心を動かすのは、ハンサムな青年の顔より、彼が描いたスケッチだ。絵にまず惚れて、その中に込められた視線をもっと知りたがる。
ENFPを思い浮かべさせる部分は、見慣れない環境でひるむより、新しく出会った人や風景に可能性を見つけ出すという点だ。関心が湧いたら、直接近づいて経験してみるタイプだ。
3話でリリは、キットの作画の秘訣を聞き出せるかもしれないと思って、彼について洞窟へ向かう。ところが、持ち帰るのは、天才の秘訣を書いたノートではない。イギリスの田舎の風景の美しさを発見して、自分がまだ見ていなかった世界に出会う経験だ。
最初は「キットに追いつきたい」という競争心から出発したけれど、好奇心は、それよりも広いところへリリを連れていく。新しい可能性を見て、そこから自分だけの意味を見つけ出すENFPの動きがよく表れる場面だ。
✦ タイプの説明
エニアグラムの4番とウイング
だからといって、リリがロマンと好奇心だけで生きているわけではない。4話でリリは、あれこれ苦戦しながらも、家族に送る手紙では毅然としたふりをする。7話では、生活費を稼ぐために仕事に追われて、絵を描く時間さえ足りなくなる。
絵は好きな仕事だけれど、同時に、画家として生き残れると証明しなければならない仕事でもある。リリには、6か月以内に1位を取らなければならないという時間制限まである。ここで4w3の組み合わせが鮮明になる。
エニアグラムの4番は「自分だけの色」を見つけたがり、3番のウイングは、その色を成果として見せて認められたい気持ちを加える。
だからリリがキットに勝とうとする気持ちには、競争心だけがあるわけではない。自分だけの絵を描きたいのに、キットの作品を見るたびに、自分にないものを先に数えてしまう。
努力すればきっと上達できるけれど、他人と比べた瞬間、自分の長所は小さく見えて、足りない点だけが大きく感じられる。リリは、まさにその罠の中で揺れる。
キットを超えようとする目標が、リリを前へ押してくれることもあるけれど、ときには絵を楽しむ余裕まで奪うわけだ。
キット ISFP 4w5、自分だけの感覚で絵を見る人
✦ キットを読む場面
自分の基準に忠実な感覚と弱点
キットは、絵を言葉で長く説明するより、スケッチと行動でまず見せる人物だ。3話でリリが、彼の作画の秘訣を期待してついていくけれど、キットが一緒に開いて見せるのは、風景そのものの美しさだ。
目の前の光と形、直接向き合った場面から、表現の手がかりを探す姿は、ISFPの感覚的で個人的な視線とよく合う。絵を描く理由を他人に納得させるより、自分が見て感じたものを作品として出す側に近い。
5話でリリは、キットの家の広い領地を訪ねて、彼が貴族として背負う重圧も垣間見る。キットは、才能と富をどちらも持った人に見えるけれど、その地位には、家門の期待と役割もついてくる。
だからといって、彼が自分の作品まで他人の基準に合わせて判断するわけではない。エニアグラムの4番の個別性に、5番のウイングの独立性と探究の傾向が加わった4w5として読めば、キットが自分だけの世界を守ろうとする態度が、もっとはっきりする。
キットにとって絵は、順位を取るための競走というより、自分が見ている世界を表現することだ。だから他人の反応や評価をあまり気にしないように見えて、自分がつくった作品も、特別だと思わない態度を見せる。
まさにこの地点で、キットの長所が弱点に変わる。自分の基準に正直なのは、芸術家としての強みだけれど、他の人にとって絵がどんな重みを持つのかを理解できなければ、その正直さが冷たくて無神経な言葉になりうるから。
9話、才能と努力のぶつかり合いが爆発する
✦ 9話から10話まで
衝突とそのあと
9話で、新しく来た彫刻専攻の学生シンがつくった彫刻作品が、講評で良い成果を上げると、ピーターは自分の才能が平凡だと苦しむ。キットとピーターは、才能と努力、作品の評価をめぐって言い争う。
キットは、自分の絵が特別だとは思わず、自分が描きたいものを描けばいいという態度に近い。でも、ピーターにとって絵は、好きなことをして終わるものではない。ほかの人に追いついて成果を出してはじめて、画家としての未来をつかめるからだ。
この言い争いで、リリがキットの頬を叩く場面は、かなり強く迫ってくる。リリも、絵を描く時間さえ足りないまま、実力を証明しようともがく人だ。だから、ピーターがなぜ傷つくのかを理解して、キットが自分の基準だけで状況を見る態度に耐えられない。
この場面は、リリをかっこいい正義の味方としてだけ見せるわけではない。ピーターの立場を理解する気持ちには説得力があるけれど、頬を叩く行動は、感情が先に立った選択でもある。正しいことを言おうとする気持ちと、相手を傷つけるやり方は別だから。
✦ 二人の関係の変化
ライバルから衝突まで
この衝突がもっと痛いのは、キットもわざと友達をいじめようとしたわけではないという点だ。キットは、自分の芸術への向き合い方を正直に話しただけだけれど、ほかの人たちは、その言葉に、それぞれの生計と未来をかけている。
自分にとっては自然な自由が、誰かにとっては切実に手に入れたい条件かもしれないことを、キットはその瞬間、きちんと汲み取れなかったのだ。10話で、キットが学校に来なくなると、リリは自分の激しい行動を悔やむ。
一度の言い争いで終わる出来事ではなく、二人がお互いの世界をどれだけ知らなかったかを明らかにした事件になったのだ。
同じ4番なのに、なぜ絵への向き合い方は違うのか
✦ 同じ4番、違うウイング
リリとキットの比較
エニアグラムの4番の中心には、自分だけのアイデンティティと表現を探そうとする欲求がある。リリの4w3は、そのアイデンティティを、成果で証明したがる方向で読める。
「自分はどんな絵を描く人なのか」という問いに、「自分がやり遂げたことを見せたい」という気持ちが加わるのだ。一方、キットの4w5は、自分の内面の視線と、独立した表現を、もっと深く掘り下げるほうだ。
二人とも自分だけの色がほしいけれど、リリはその色を世界に証明しようとして、キットはまず自分の基準で守ろうとする。
原作・キャラクター原案・脚本を務める神尾葉子は、リリを見る人が力をもらえるようにという気持ちでつくり、キットは、議論を経て、いっそう鋭い天才型に整えたと明らかにした。
実際、リリの明るく積極的な動きと、キットの切れ味のある正直さは、9話で正面からぶつかる。制作陣がつくった性格の違いが、物語のいちばん大きな葛藤につながるわけだ。
この作品が投げかける答えは、「才能が勝つ」とか「努力は裏切らない」のような簡単な文ではない。才能はスタートラインを前に進められるけれど、それだけで他人の気持ちを理解できるようにはならない。
努力は実力を伸ばすけれど、他人を基準にするばかりだと、自分がなぜ絵を好きだったのかを忘れてしまうこともある。リリはキットのようになる代わりに、自分だけの絵を探さなければならないし、キットは、自分のやり方だけがすべてではないと学ばなければならない。
二人が本当のライバルである理由は、お互いの才能をうらやましがるからだけではなく、絵への向き合い方が正しいと、それぞれ信じているからだ。
だから、どちらがより優れた画家かを決める場面より、違う芸術観がぶつかって、二人の弱点を明らかにする9話こそ、この作品の核心だと言える。
もしかして…この作品を見ていないのに、ここまで私の文章を読んだの? なんてこと! いまからでも行って、この作品を一度見てみたら? きっと面白いはずだ。
今回はここまでにするよ。また会おう。
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